書籍 『溶ける』を読んで ― リタイア後の反面教師として

2025-10-19

書評

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大王製紙の元会長・井川意高(いかわもとたか)氏が書いた自伝『熔ける』を読んだ。

本そのものは「まあまあ」といった印象だったが、ギャンブルで身を崩した著者の人生談は、リタイア生活を送るうえでの反面教師として教訓を与えてくれた。

今回はこの本を読んで感じたこと、学んだことをまとめてみたい。

冒頭:多額のギャンブル

井川氏は愛媛県の製紙会社・大王製紙の三代目。

会長の立場にありながらギャンブルにのめり込み、最終的には大王製紙の子会社から106億円以上を借り入れ、特別背任罪で懲役4年の実刑を受けている。

本の冒頭は、井川氏がシンガポールのカジノで20億円ものギャンブルをしている場面から始まる。

正直なところ、最初に思ったのは「バカだな…」の一言。

自分がカモになっていることに気づかない。

周りの人が自分のお金目当てで寄ってきているのもわからない。

バカラという、技術の介入の余地がなく期待値がマイナスのゲームを選んでいるのもバカ。

確率ではなく「ゆらぎの法則」という運の偏りを信じているのもバカ。

半ばあきれながら読み進めていた。

中盤:幼少期から大王製紙の社長まで

しかし話が幼少期や学生時代に戻ると、印象が一変する。

なかなか優秀な人物なのだ。

中学受験の模試では全国2位。

大学は東京大学法学部に進学。

大王製紙に入社してからも、まず4年間かけて現場で経験を積み、上の立場になってからも根性論ではなく数字で物事を考える。

リーマンショックのときには、父親の反対を押し切ってスピード感のある緊縮策を打ち出した。

逮捕後の調査でも、井川氏の仕事ぶりについて悪く言う声はあまり出てこなかったという。

終盤:再びギャンブルへ

その後、物語はギャンブルから逮捕、実刑へと進んでいく。

このあたりを読むと、また最初の感想――「バカだな」が戻ってくる。

ただ同時に、井川氏がなぜそこまでギャンブルにはまったのか、その背景を知ると、そこから学べる教訓も見えてくる。

教訓1:ライフスタイルを見直す

井川氏は学生時代から銀座や六本木で飲み歩き、華やかな生活を送っていた。

本人はいろいろ言い訳を語っているが、やはり煌びやかな世界に長く浸ってしまうと、その後の価値判断にも影響を与える。

アーリーリタイア後との比較でいうと、リタイア後は時間とお金の余裕があるからこそ、身を亡ぼすほどの刺激とは距離を置くよう注意したい。

教訓2:周りに置く人を選ぶ

「あなたは、最も多くの時間を過ごす5人の平均である」という言葉がある。自分の考え方は、最も身近にいる人たちから強く影響を受けるという意味だ。

だからこそ、誰を身近に置くかはよく考えないといけない。

井川氏の場合、Kさんというギャンブルマネージャー的な人物との出会いが、ギャンブルにめり込むきっかけになったように見える。

教訓3:無理やストレスはどこかで牙をむく

井川氏がカジノにはまったきっかけは、仕事のストレスからの息抜きだったという。

スキルが求められるポーカーではなく、単純な丁半博打であるバカラを選んだのも、「考えたくない」気持ちの表れかもしれない。

無理をすれば、いずれどこかで反動が出る。精神的な負荷は形を変えて人生を壊す。

これは誰にでも起こり得ることだと思う。避けるには、負荷に耐えられなくなる前に予防・対処する必要がある。

まとめと感想

リタイア後は、ある程度の資産と時間があるのが普通だ。だからこそ、楽しいことや刺激を求めがちになる。

私自身についていえば、どんなゲームでも「運」より「スキル」が問われるものが好きで、期待値がマイナスの賭けにはそもそも興味がわかない。

ギャンブルで身を崩す可能性は低いと思うが、それでも井川氏の例は、常に頭の片隅に置いておきたい。

自由もお金も、使い方を誤ればあっという間に“熔けて”しまう。

リタイア生活を続ける上で、自制心は欠かせないスキルだと感じた。

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十数年の経営者生活を経て、現在ほぼFire。「めでたしめでたし」で物語が終わった後の長い人生、どう満喫するかを探求しています。このブログでは、リタイア後の旅や暮らし、健康、思索、資産運用など、気の向くままに記録していきます。同じく「めでたしの後」を歩む人たちとつながりながら、暮らしをより良く、少しずつ充実させていけたら嬉しいです。

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